Petrov's Defense
黒は e5 をめぐる戦いを断り、代わりに e4 へ逆襲します。対称形そのものが武器です。
1. e4 e5 2. Nf3 のあと、ほとんどの人は 2...Nc6 で e5 のポーンを守ります。ペトロフ・ディフェンスの使い手は守りません。黒は 2...Nf6 で白の e4 のポーンに当て、こう言います。そちらが取るならこちらも取ります、と。このオープニングは 19 世紀前半のロシア最強のプレイヤー、アレクサンドル・ペトロフの名前を冠しています。ロシアン・ディフェンスとも呼ばれます。
対称形には一つだけ注意が要ります。3. Nxe5 のあと、黒はすぐに 3...Nxe4 と真似をしてはいけません。正しい順番は先に 3...d6 です。これでナイトを追い、そのうえで 4...Nxe4 と取ります。この 1 手を間違えなければ、黒の局面は崩しにくいことで有名です。健全なポーンストラクチャー、速い展開、そして開いた e ファイルをめぐる早い段階からの主張がそろっています。
トップレベルでの評判は要塞です。ファビアーノ・カルアナは 2018 年のカールセンとの世界選手権でこれを主力のディフェンスにし、クラムニクも 2000 年代を通じて頼りにしました。クラブレベルでは、引き分けになりやすいという評判はほとんど蒸発します。双方のキングが同じ半開きの e ファイルへキャスリングするので、頼まなくても戦術はやってきます。
白は、1 手多いテンポに意味があることを証明したいところです。3. Nxe5 d6 4. Nf3 Nxe4 のあとの主なプランは 5. d4 と Bd3、キャスリング、そして Re1 や c4 といった手で e4 のナイトを追い回すことです。これは e ファイルの争いでもあります。3. Nc3 は駒を盤上に多く残し、最も重いセオリーを避けます。一方 3. d4、モダン・アタックはただちに中央を開き、アイデアではなく細部を知っているかどうかを黒に問います。
黒のプランはほとんどチェックリストです。...d6 でナイトを追い、...Nxe4、続いて ...d5 でナイトを固定し、ビショップを e7 か d6 へ展開してキャスリング、ルークで e ファイルを争います。黒は小細工を狙っているのではありません。要点は、交換のたびに白が先手の利の消えた局面へ近づいていくこと、そして白が押しすぎればイニシアチブがそのまま黒に渡ることです。
クラブレベル(Lichess の 1600-2000)では、ペトロフ・ディフェンスは少数派の好みです。1. e4 e5 2. Nf3 のあと 2...Nf6 を選ぶのは 10.9% にとどまり、2...Nc6 は 65.7% です。それでもこの局面は、私たちのデータベースに 3500 万局を超えて現れます。白の主な応手三つはいずれも 52% です。3. Nxe5(対局の 33.3%)、3. Nc3(32.8%)、3. Bc4(17.6%)。覚えておく価値のある数字は 3. d4、モダン・アタックです。現れるのは対局の 7.5% にすぎませんが、成績は 55% です。最も厳しい応手が、クラブプレイヤーの最も見ない応手なのです。
アレクサンドル・ペトロフ — 19 世紀前半のロシア最強のプレイヤーです。このディフェンスは彼の名前を冠しており、彼にちなんでロシアン・ディフェンスとも呼ばれます。
ファビアーノ・カルアナ — 1. e4 に対する主力のディフェンスをペトロフ・ディフェンスにしました。最も目立ったのは 2018 年、マグヌス・カールセンとの世界選手権です。
ウラジーミル・クラムニク — 2000 年代の黒番レパートリーの柱で、ベルリン変化と並ぶ存在でした。堅さを最優先する、同じ哲学です。
まねっこの罠で、ペトロフ・ディフェンスの使い手が絶えず引っかかります。3. Nxe5 のあと、3...Nxe4 と真似をするのが間違いです。4. Qe2 が e ファイル越しにナイトへ当て、自然な退却の 4...Nf6 が 5. Nc6+ に飛び込みます。ナイトが動くことで e2 のクイーンからのチェックが開き、そのナイト自身が d8 の黒のクイーンに当たっています。黒はチェックに応じるほかなく、ナイトと引き換えにクイーンを失います。黒の正しい順番は先に 3...d6、それから e4 を取ることです。
- 分類
- オープンゲーム
- 初手
- 1.e4
- ECO
- C42
- 変化
- 1. e4 e5 2. Nf3 Nf6
19 世紀ロシアのマスター、アレクサンドル・ペトロフにちなむこの防御は、百年のあいだ「引き分けやすい」という札を貼られてきました。それを 2018 年の世界選手権に持ち込んだのがファビアーノ・カルアナです。マグヌス・カールセンの 1.e4 二局にこれで応じ、二局とも引き分けました。クラシカル 12 局はすべて引き分けに終わり、タイトルはラピッドのタイブレークで決着しています。対称形も、使いようによっては武器でした。